中性脂肪蓄積心筋血管症〈triglyceride deposit cardiomyovasculopathy;TGCV〉

わが国の心臓移植待機症例から見出された成人発症の新規難病(N Engl J Med 359 : 2396-2398, 2008)である。心筋細胞や冠動脈血管平滑筋細胞などに中性脂肪(TG)が蓄積する結果、重症心不全やTG蓄積型のびまん性冠動脈硬化(Eur Heart J 35 : 875, 2014)を呈する。細胞内TGの分解障害が病態の首座であり、細胞内TG蓄積と脂肪酸が遊離されないためエネルギー不全が生じる。

血清TG値や肥満度には診断的価値がない。細胞内TG分解障害はBMIPP脂肪酸代謝シンチグラフィの洗い出し率 (WR)で評価が可能で (Eur Heart J. 36: 875, 2015)、WR 10%未満が診断基準の必須項目の1つである (Heart 107 : 93-95, 2021)(https://tgcv.org/)。

厚生労働省/日本医療研究開発機構(AMED)の難病研究事業TGCV研究班によると、2022年12月現在の累積診断数は640例、症例の98%は、遺伝的原因が不明の特発性である。5年生存率は72%であり、厚労省において指定難病化に向けて議論がなされている。潜在患者数は4~5万人で、実診断数との解離が大きく疾患啓発が必要である。

2009年から厚労省/AMEDの難病事業として大阪大学でアカデミア開発された治療薬CNT-01(主成分は、tricaprin/trisdecanoin)は、毒性試験/薬効薬理試験を経て、3度の医師主導治験を終えた(Ann Nucl Cardiol 8 : 67-75, 2022)。さらに主成分を含む栄養療法によりTG蓄積型動脈硬化の顕著な退縮が認められたこと(Eur Heart J : ehac762, 2022)などから、厚労省から先駆的医薬品・希少疾病用医薬品指定を受け、国内製薬企業が検証的治験を実施している。