肺高血圧症〈pulmonary hypertension〉

肺高血圧症はさまざまな原因により肺動脈圧が持続的に上昇した病態で、右心不全や呼吸不全が順次進行する難治性疾患として知られている。肺高血圧の定義は安静時に右心カテーテル検査を用いて実測した肺動脈平均圧(mean pulmonary artery pressure;PAP)が25mmHg以上で、さらに肺高血圧症例中で特に肺動脈楔入圧(pulmonary artery wedge pressure;PAWP)が15mmHg以下の場合を肺動脈性肺高血圧症(pulmonary arterial hypertension;PAH)と定義する。旧来は肺高血圧症の代表的疾患としては原発性肺高血圧症(primary pulmonary hypertension;PPH)やEisenmenger症候群が有名だったが、肺疾患や結合組織病など他の多くの疾患や病態にも合併することを背景として5つの群に分類整理することが提案された。2008年の第4回肺高血圧症ワールド・シンポジウムでダナポイント分類に改訂され、2013年の第5回肺高血圧症ワールド・シンポジウム(ニース会議)で小規模修正がされて現在の臨床分類となっている(表)。第1群:PAH、第2群:左心性心疾患に伴う肺高血圧症、第3群:肺疾患および/または低酸素症に伴う肺高血圧症、第4群:慢性血栓塞栓性肺高血圧症(chronic thromboembolic pulmonary hypertension;CTEPH)、第5群:詳細不明な多因子のメカニズムに伴う肺高血圧症に分類されている。自覚症状としては、労作時呼吸困難、息切れ、易疲労感、動悸、胸痛、失神、咳嗽、腹部膨満感などがみられる。

再改訂版肺高血圧症臨床分類

病理組織学的にはPAHでは直径500μm以下の末梢の肺小動脈に孤立性中膜肥厚、中膜肥厚と内膜肥厚の合併、複合血管病変〔叢状病変(plexiform lesion)、拡張性病変、血管炎など〕が進行とともに出現する。

治療としては、まず酸素療法、利尿薬、抗凝固療法など一般支持療法を行う。PAHに対する内科治療は近年飛躍的に進歩して、現在はわが国ではプロスタサイクリン経路に属するプロスタサイクリンとその誘導体、エンドセリン経路に属するエンドセリン受容体拮抗薬(endothelin receptor antagonist;ERA)、および一酸化窒素(NO)経路に属するホスホジエステラーゼ5阻害薬(phosphodiesterase type-5 inhibitor;PDE5-I)の3系統の特異的PAH治療薬が存在する。これらの薬剤の併用療法には、特定の治療目標を定めて逐次PAH治療薬を追加していくsequential combination therapyと、具体的目標を設定せず治療初期から複数薬剤をほぼ時間差なく併用開始するupfront combination therapyがある。あらゆる内科治療に反応しないNYHA(New York Heart Association)分類のⅢ~Ⅳ度の患者では肺移植も適応となる。

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