薬剤師向け

第1回 心不全地域連携と薬剤師の役割 #2

最近の心不全の薬物治療について教えてください。

HFrEF(左室駆出率の低下した心不全)に対しては、これまでβ遮断薬、ACE阻害薬/ARB、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)が標準治療薬でした。 近年では、ACE阻害薬/ARBの代替薬としてアンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)が登場したほか、SGLT2阻害薬は糖尿病を合併していない心不全患者さんにも予後改善の効果が期待できることが分かり1-4)、「Fantastic 4」と呼ばれる新たな標準治療薬に加わりました。

さらに、心拍数コントロールが期待できるイバブラジンや、心不全増悪後の予後改善が期待できるベルイシグアトなども承認されたことで、HFrEFに対する治療薬の選択肢は広がっています。

一方、HFpEF(左室駆出率の保たれた心不全)の予後を改善する薬物治療は確立されていませんでしたが、SGLT2阻害薬に関しては効果を示すエビデンスが出ているため5)、 HFpEFに対するSGLT2阻害薬もしっかりと継続する必要があります。

心不全治療薬の服薬における問題点と、服薬指導の重要性を教えてください。

心不全治療薬の服薬に関する問題点として、高齢に伴う認知機能低下による服薬コンプライアンス不良はこれまでもいわれてきました。 それに加えて、心不全の標準治療薬はたくさんの種類の薬が必要になることから、ポリファーマシーも問題になっています。

したがって、まずは患者さんが一つ一つの薬への理解度を深めて服薬コンプライアンスを改善させることが重要です。 そのためには、服薬指導時に薬の必要性をしっかりと説明することが大切ですので、この役割を薬剤師の先生方に担ってもらっています。 我々が作成した心不全手帳にも標準治療薬の重要性を記載しているため、こちらも活用しながら患者さんに説明してもらいます。

地域連携の会でも、近隣の先生方には「Fantastic 4」をはじめとした治療薬の継続をお願いしているところです。 また、ポリファーマシーに関しては、患者さんが処方内容を十分理解して適正な処方に働きかける必要もあると思います。

薬剤師の関わりについて教えてください。

病棟薬剤師の取り組み

当院では、病棟薬剤師さんに心不全患者さんの服薬指導に積極的に関わってもらうようにしています。 標準治療薬について説明し、必要性を理解してもらうことで、服薬コンプライアンスの向上に繋げているほか、持参薬を確認して薬の調整にも関わってもらっています。

薬薬連携

さらに、最近では近隣の保険薬局と連携する薬薬連携に取り組み始めたところです。 例えば、当院薬剤部と保険薬局が意見交換する中で、保険薬局薬剤師から「病名・既往すら把握できない」という声が挙がったため、入院時の状況等を記載した退院時薬剤情報提供書を作成しました。 患者さんが保険薬局に行く際に退院時薬剤情報提供書を持参することで、保険薬局薬剤師が薬剤の処方背景を理解でき、患者さんに服薬継続の必要性を伝えることができます(図3)。

また、心不全治療薬は新薬がたくさん発売されていますが、保険薬局薬剤師の先生方は普段心不全患者さんばかり対応している訳ではないため、情報がアップデートされていない場合があります。 そのため、当院薬剤部が心不全薬物治療に関する動画シリーズ「心不全薬物療法Q&A」を当院HPで公開し、保険薬局薬剤師に見てもらうという取り組みを行っています。 今後は、保険薬局薬剤師側から見た薬薬連携について地域連携の会で発信してもらい、問題点などをディスカッションする予定です。

薬薬連携が進むことでポリファーマシーの解消に繋がると思いますし、地域医療の中で患者教育が充実することで、さらなる服薬コンプライアンスの改善が期待できるのではないかと考えています。

今後の展望を教えてください。

今後も心不全患者さんの高齢化が進み、患者数も増加していくと思われますので、心不全地域連携を強化し、心不全患者さんをカバーできる施設を増やしたいと考えています。 薬薬連携のさらなる広がりにも期待していますし、外来心臓リハビリに関しても、対応できる連携施設が増えていくことに期待しています。

  • 1) McMurray JJV, et al.: N Engl J Med 2019; 381: 1995-2008.
  • 2) Petrie MC, et al.: JAMA 2020; 323: 1353-1368.
  • 3) Packer M, et al.: N Engl J Med 2020; 383: 1413-1424.
  • 4 ) Zannad F, et al.: Lancet 2020; 396: 819-829.
  • 5) Anker SD, et al.: N Engl J Med 2021; 385: 1451-1461.
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