薬剤師向け
第1回 心不全地域連携と薬剤師の役割
心不全は、近年高齢化に伴う患者数の増加や再入院率の高さが問題となっており、 「脳卒中と循環器病克服5ヵ年計画」においても重要3疾患の一つとなっています。
こうした状況の中、倉敷中央病院では「心不全を地域で診る」という理念の下、 地域連携を推進しています。
同院循環器内科部長の多田毅先生に、心不全地域連携の取り組みと、 その中における薬剤師の役割について伺いました。
心不全地域医療における、倉敷中央病院の役割や特徴を教えてください。
岡山県西部地区には救命救急センターを持つ基幹病院が二つあり、当院はそのうちの一つとして、急性期の心不全医療を担っています。
当院の特徴は、高齢化による心不全患者数の増加に対応するため、「いかに患者さんを地域で管理するか」という点を重視しているところです。 入院時から地域連携を意識しており、患者さんや患者さんのご家族にも地域連携体制をしっかり説明することで、転院にご理解をいただいています。
また、近年では高齢者でも大動脈弁狭窄症や僧帽弁閉鎖不全症に対するカテーテル治療を行うようになったため、低侵襲のカテーテル治療による心不全診療にも力を入れています。
心不全地域医療連携の会
急性心筋梗塞などの虚血性心疾患で急性期病院に入院した場合、カテーテル治療後は比較的症状が落ち着くため、退院後は直接かかりつけ医を受診してもらいます。
しかし心不全の場合は、退院後も利尿剤やβ遮断薬などの微調整が必要になるため、直ちにかかりつけ医にお願いするという形では管理が難しいことがあります。
そこで、当院を退院後に、患者さんに近隣の循環器内科の先生がおられる慢性期病院で転院や外来通院の形で数か月かけて内服調整し、症状が安定してからかかりつけ医を受診してもらうという体制の構築を目指しました。
「心不全地域医療連携の会(以下、地域連携の会)」は、この急性期病院から慢性期病院、そしてかかりつけ医に繋ぐという三段構えの医療体制の連携強化を目的としています。
当初は医師10人ほどの小さな会でしたが、多職種による地域包括ケアの重要性が高まるにつれて、近隣の施設等の多職種(薬剤師、看護師、栄養士、理学療法士、地域連携室、ケアマネージャー、メディカルソーシャルワーカー)の方にも参加いただけるようになり、参加者が毎月50~70人に増えました。
コロナ禍でWeb開催となってからは、さらに増えています。月1回開催されるこの地域連携の会では、多職種が月替わりで講師を担当し、ミニレクチャーや心不全の症例検討会等を行っています。
心不全手帳
心不全地域医療の一貫性を担保するために、地域連携の会監修で作成したのが「心不全手帳」です。 「教育用」と「記録用」の2種類があり、「教育用」は、心不全の症状や治療について患者さんに知っていただきたい内容をまとめた冊子で、多職種がそれぞれの専門分野を担当して作成しました(図2)。
この心不全手帳を用いて当院入院時に患者教育を行い、退院後も慢性期病院やかかりつけ医に持参してもらうことで、心不全管理や患者教育の質が均一になることを目指しています。 「記録用」の冊子は6か月分記載できるようになっているため、半年ごとに当院を受診される際に、新しい冊子をお渡ししています。
心臓リハビリと訪問看護との連携
患者さんが希望する地区での円滑な外来心臓リハビリ導入のため、「心臓リハビリ地域ネットワーク」を構築しました。 これにより、かかりつけ医で日常診療を継続しながら、慢性期病院の外来心臓リハビリへの通院が可能になっています。
また、心不全は自宅での管理も非常に重要になるため、訪問看護ステーションにも積極的な介入を依頼しています。 さらに、心不全患者さんの対応に不安がある訪問看護師さんのために「心不全ホットライン」をつくり、訪問看護師さんが地域連携室を介して当院の心不全チームの医師・看護師とタイムリーに連絡が取れる体制を整えています。
心不全地域連携クリティカルパス
心不全地域医療連携をさらに強化するために、「心不全地域連携クリティカルパス」を導入しました。 当院入院時に入院診療計画書を兼ねて作成し、退院後の慢性期病院やかかりつけ医でそれぞれの欄に記入してもらう形で運用しています。
心不全地域チーム医療を意識できる上、こちらを作成することで地域連携診療計画加算を算定することができ、少しでも地域連携することへのモチベーションに繋がればと考えています。 算定要件には「年3回以上の情報交換」も含まれますので、地域連携の会ではその時間も設けています。
心不全患者さんを地域で診ることによるメリットは何でしょうか。
当地域で実施している急性期病院、地域の基幹病院(慢性期病院)、かかりつけ医という三段構えの医療体制を、「3人主治医体制」と呼んでいます。 このように役割分担を明確にすることで、高齢心不全患者さんが急激に増加している中で患者さんがどこかの医療資源に偏ることなく地域全体で均等に患者さんを診ることができ、一部の施設に負荷がかかり過ぎることが避けられるというメリットがあります。患者さんにとっても、慢性期に近隣の施設で加療を受けられるという点がメリットかと思います。



