循環器用語ハンドブック

人工弁〈artificial(prosthetic) valve〉

人工弁には、パイロライトカーボンなどの金属材料による機械弁と、ウシあるいはブタの生体材料による異種生体弁とがある。1958年Lilleheiらが、シリコン製の二尖弁を用いて大動脈弁置換術を施行したことに始まる。初期は耐久性に問題があり、ボール弁も耐久性が低く容積が大きかったため改良が重ねられ、円盤弁、傾斜型円盤弁を経て現在最も臨床使用されている二葉弁(傾斜型二葉半円盤弁)に至っている。St. Jude Medical弁(図)、Carbomedics弁、ATS弁などがその代表である。

図.人工弁

二葉人工弁は、ほぼ完全な中心流が得られ弁高が低く頻脈追従性に優れているなどの優位性に加え、抗血栓性や耐久性の両面でそれ以前の傾斜型円盤弁などを上回る長期遠隔成績を示している。異種生体弁としてCarpentier-Edwards弁、Hancock弁(図)などがあるが、二葉人工弁に匹敵する遠隔成績を示した生体弁はない。機械弁は耐久性が良好であるが、抗凝固療法が必要である。現在抗凝固療法は、ワルファリンを主体としたコントロールが一般的で、さらに抗血小板薬を追加する場合もある。生体弁は、抗凝固療法は不要であるが、耐久性に問題があり弁葉の石灰沈着による狭窄病変、ステントへの装着部での亀裂などによる破損が4~5年目より増加し、約10年で半数以上の破損を認めるとの報告もある。生体弁の適応としては現在のところ、抗凝固療法が不可能な例、妊娠希望の女性、70歳以上の高齢者などに限られる場合が多い。

最近ではより生理的構造を維持することにより耐久性を向上させるために、支柱を一切用いないステントレス弁(図)が使用されその有効性が中期遠隔期において示されつつある。また欧米では、抗血栓性と耐久性のいずれをも満足する材料としてヒト大動脈弁(ホモグラフト、アログラフト)が古くから試行されてきたが、凍結保存法の進歩によりその成績が向上し、さらに遺体からの摘出、処理、分配などのシステムが確立していることもあり広く行われている。自己肺動脈弁を大動脈弁に移して使用する方法(オートグラフト)を、特に小児を中心に行っている施設もある。

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