循環器用語ハンドブック
心臓CT〈cardiac computed tomography〉
常に拍動する心臓はCTによる撮像が困難であり、小径である冠動脈の評価は特に困難とされてきた。しかし、2004年に64列MDCT(multi detector-row computed tomography)が登場して以降は高速に広範囲の撮影が可能となり、心電図同期技術や線源高速回転技術も発達したことで、心臓・冠動脈もCTにて正確に評価することが可能となった。現在では直径2mmの冠動脈の狭窄までも描出し、症例によっては冠動脈造影検査を置き換えられるようになってきている。『冠動脈病変の非侵襲的診断法に関するガイドライン』(2009年、日本循環器学会)にて運動負荷心電図よりも冠動脈狭窄の診断能は感度、特異度ともに心臓CTのほうが高いことが明記されており、冠動脈疾患の中等度のリスク群である症例で、腎機能低下や造影剤アレルギーなどの問題のない例に対しては有用な精査となりうる。
256列や320列の心臓CTも開発され、さらなる時間・空間分解能の改善、被曝線量の低下、造影剤使用量の軽減が可能となり、より低侵襲で精度の高い検査が可能となっている。心臓CTで得られた画像の解析ソフトも数多く開発され、それらを用いて冠動脈の狭窄度を診断するだけでなく、病変形態や冠動脈壁性状を分析して経皮的冠動脈インターベンション(PCI)に活用することも行われている。冠動脈壁におけるCT値の低いプラークの存在は、PCI時のslow flowを予測する因子として知られており、石灰化の分布を詳細に検討することによってrotablationの必要性を示唆することも可能である。慢性完全閉塞病変では、閉塞部の形態や閉塞部以遠の血管情報を得ることができ、治療戦略を立てる際に非常に有用である。収縮期と拡張期(あるいは1心拍の全期)を分析して壁運動や心機能評価を行うことも可能で大動脈や末梢動脈などの精査を同時に行うこともできる。

