循環器用語ハンドブック
ATTR〈amyloid transthyretin(transthyretin amyloid)、トランスサイレチン型アミロイド〉
トランスサイレチン(transthyretin;TTR)を前駆物質としたアミロイド蛋白であり、このアミロイド蛋白が沈着することにより臓器障害をきたした状態がATTRアミロイドーシスである。特に心臓病変は、トランスサイレチン型心アミロイドーシス(transthyretin amyloid cardiomyopathy;ATTR-CM)と呼ばれている。ATTRアミロイドーシスには、TTR遺伝子の変異に起因した遺伝性とTTR遺伝子変異を伴わない野生型の2つの病型が存在する。
遺伝性ATTRアミロイドーシス(ATTRv)では、末梢神経障害、自律神経障害、心症候、眼症候、中枢神経障害などのさまざまな症候を呈する。TTR遺伝子変異は100種類以上報告されており、変異型の違いにより主たる症候や障害臓器は異なりさまざまな表現型を呈する。
野生型ATTRアミロイドーシス(ATTRwt)は、以前は老人性全身性アミロイドーシスと呼ばれていた。主に心臓と関節・靭帯へのアミロイド沈着に起因した心症候、手根管症候群、脊柱管狭窄症が主症候となる。
TTRは、甲状腺ホルモンとレチノール(ビタミンA)の輸送に関わる蛋白質であり、主に肝臓で産生される。4量体を形成して機能しており、この4量体が不安定となり単量体へ解離することがアミロイド蛋白の形成に関与している。長年、有効な治療はATTRvに対する肝移植のみであったが、TTR四量体を安定化させることでアミロイド線維の形成を抑制するタファミジスが開発され、2013年よりATTRvの末梢神経障害の進行抑制の適応で使用可能となり、2019年3月には遺伝性および野生型ATTR-CMの治療適応が追加された。さらに、低分子干渉RNA(siRNA)の技術を用いて肝臓でのTTR産生を抑制するパチシランが開発され、2019年9月よりATTRvの末梢神経障害に対して使用可能となっている。

