循環器用語ハンドブック

微小循環〈microcirculation〉

微小循環(microcirculation)とは、広域循環(macrocirculation)と対応する概念である。細動脈から毛細血管そして細静脈までの、光学顕微鏡を用いて観察することが可能な循環系であり、400~200μm以下の微細な循環を指す。細動脈の血圧調節、毛細血管の物質交換、細静脈の血液量調節と多様で、生体内部環境の維持に重要な機能を果たしている。

冠微小循環は、冠循環の約95%を占めており、冠血流調整および物質輸送調節による心筋への酸素、グルコースなどの栄養素の供給といった役割を担っている。冠動脈はepicardial arteryから心筋内に入り込み、分岐して冠細動脈になる。分岐に従って血管径を減じ、毛細血管細動脈(precapillary)、内皮細胞と周皮細胞からなる毛細血管を経て、冠細静脈に移行する。冠細動脈は、内・中・外膜の3層構造を有する筋性動脈で、このレベルでは中膜は4~6層の平滑筋細胞から構成される。Precapillaryレベルの中膜は1層の平滑筋細胞になり、終末細動脈の中膜は不連続となり、平滑筋細胞も散在するようになる。冠小静脈は内皮細胞のみから構成されるが、血管径の増大に伴って中膜の平滑筋細胞が認められるようになる。冠微小循環障害は、冠動脈狭窄を有さない狭心症(ischemia with non-obstructive coronary arteries ; INOCA)や、冠動脈狭窄を有さない心筋梗塞(myocardial infarction with non-obstructive coronary arteries ; MINOCA)、左室駆出率の保たれた心不全(HFpEF)などさまざまな心疾患の病態に関与している。今後これらの疾患の病態基盤として冠微小循環障害が分子レベルで解明され、微小循環改善を介した新たな治療開発が望まれる。

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