薬剤師向け
第6回 心不全における病院から地域へのケア移行~保険薬局薬剤師の立場から~
心不全増悪を防ぐために、心不全患者の増悪要因に着目し、退院後の日常生活においてフォローアップを行うことは重要です。
保険薬局薬剤師の立場からみた心不全薬薬連携について株式会社関西メディコ サン薬局 西垣 賢 先生にご解説いただきました。
保険薬局薬剤師で心不全療養指導士を取得したきっかけ
私の勤務するサン薬局天理東2号店は、経皮的冠動脈形成術(PCI)やカテーテルアブレーションといった、 心臓カテーテル治療において関西でトップクラスの症例数を誇る病院の門前に位置しています。
そのため、虚血性心疾患や心房細動といった循環器疾患の処方箋を多く応需しており、 中には心不全を起こしてしまう患者さんを何度も経験してきました。 そこで、もっと質の高い心不全療養指導に繋げたいと考え取得しました。
また保険薬局では、心不全のリスクステージであるステージA・Bはもちろんですが、 まだ高血圧や糖尿病などの生活習慣病をもっていない、もしくは診断されていない方も来局されます。
生活習慣病を未然に防いで、「心不全ステージAにさせない」ための予防啓発活動に関しては、 保険薬局が大きく貢献できるのではないかと考えています(図1)。
予防啓発活動について
当社(株式会社関西メディコ)は、奈良県を中心に現在68店舗を展開しています。
奈良県全体の保険薬局数としては約560店舗で、そのうち当社は64店舗出店し、奈良県において店舗数は1位になります。
奈良県における2019年の死因の第1位はがん(28.1%)ですが、心疾患と脳血管疾患を合わせた「循環器病」は23%とがんに匹敵します1)。特に奈良県では、心疾患は全国で男性ワースト8位・女性ワースト7位です2)。
一方、当社ではこの地域密着薬局という立地を活かして、これまでに行政などとタイアップした疾患啓発活動にも取り組んできました。 特に、2022年は日本循環器協会の健康ハートの日共催イベント事業で、心不全の症状・リスク・予防のための健康習慣を啓発する活動を行いました。 独自に作成したリーフレットに、奈良県のマスコットキャラクターである「せんとくん」を掲載し、"奈良ならではのハートの日~心疾患をなんとか「せんと」!~"と題して、待合室への掲示や来局された患者さんに配布を行う活動を実施しました。
薬薬連携について
門前医療機関の薬剤部では、以前から薬薬連携に積極的に取り組んでおられ、 ①抗がん剤の副作用マネジメント、②糖尿病患者に対する重症低血糖予防、を対象に「テレフォンフォローアップ」を使った調剤後フォローを開始していました。
テレフォンフォローアップでは、保険薬局薬剤師が患者さんに受診と受診の間の投与中日(なかび)に電話でフォローを行い、その内容をトレーシングレポートで病院に報告をします。
また、入院時の薬剤変更・処方追加に関する情報が記載された「薬剤管理サマリー」を、退院の際にかかりつけ薬局宛てに交付いただいています。これにより、入院時の経過とともに、薬剤の変更理由などを把握した上で服薬指導をすることができます。
この取り組みを発展させる形で、2022年より心不全再入院予防を目的とした、「心不全テレフォンフォローアップ」を開始しました(図2)。
心不全入院した患者さんに対して、退院時処方とともに薬剤部より、かかりつけ薬局向けの薬剤管理サマリーが交付されます。
そして次の外来受診時に処方箋と薬剤管理サマリーを薬局で提出していただきます。
電話では、薬剤管理サマリーに記載された「増悪要因」を中心に、 患者さんの生活状況を確認します。
この取り組みを継続して、心不全増悪症状の早期発見に繋げ、 再入院を予防することを目標としています。
心不全テレフォンフォローアップについて
心不全の増悪要因の中でも、塩分・水分制限の不徹底や薬剤のアドヒアランス低下による増悪では徐々にむくみが出て体重増加するなど、 保険薬局の薬剤師でもいち早く心不全増悪を察知することで、心不全入院を防ぐ取り組みができるのではと感じています。
特に、服薬の不徹底が心不全の増悪要因であれば、服薬管理に関しては保険薬局の腕の見せ所であり、 それ以外の増悪要因についてもしっかりと把握した上でフォローを行うことは、大変重要だと考えます。
薬剤管理サマリーでは、心不全入院に至った増悪要因を記載いただいており、これによりテレフォンフォローアップでは前回入院時の増悪要因を中心に聞き取りを行うことができます。
心不全用トレーシングレポートでは、起坐呼吸や呼吸苦増悪、急激な体重増加(3日間で2㎏以上)などの心不全増悪症状を確認した場合に、 トレーシングレポートの送付と薬剤部への電話対応が必要であることが、一目でチェックできるようになっていることも特徴です(表1)。
テレフォンフォローアップを行う上で注意していることとしては、患者さんの仕事や家族構成などの生活背景を知り、『患者さんにとって大切にしていること』を教えてもらうことです。 心不全は、長い療養生活を患者さん自身がセルフマネージメントしていくことが必要なので、それを理解した上で一緒に伴走していきたいと思います。
今後はこの取り組みを継続して、心不全患者の予後改善に貢献することで、 結果としてがん(特定薬剤管理指導加算2)や糖尿病(調剤後薬剤管理指導加算)のフォローのように、心不全再入院予防の取り組みが、独立した評価につながっていけばと考えています。
- 1)「人口動態調査」(2019年)厚生労働省
- 2)「人口動態統計特殊報告」(2015年)厚生労働省




