循環器用語ハンドブック
心マッサージ〈cardiac massage〉
心マッサージの目的は心拍再開を図ることであり、それまでの脳循環を確保し、冠血流を得ることである。心マッサージ法には、胸骨圧迫心マッサージ(閉胸心マッサージ)、ACD-CPR(active compression-decompression cardio-pulmonary resuscitation)および開胸心マッサージがある。
①胸骨圧迫心マッサージ:胸骨と脊柱の間で心臓を圧迫することにより心拍出量を得る方法である。患者を水平仰臥位にして、患者の胸部の側方に立つ。胸骨下半分に片方の手掌を置き、他方の手掌をその上に重ね、前腕をまっすぐに伸ばして上半身の体重をかけるように圧迫する。背中の下に胸郭より大きな硬い板を敷いて行えば効果的である。成人の場合、1分間に80~100回の比較的速いスピードで、垂直に4~5cm沈み込む程度に圧迫する。人工換気を併用する場合、術者が1人であれば心マッサージ15~20回に対して人工換気を2回の割合で、術者が2人であれば心マッサージ5回に対して人工換気を1回の割合で繰り返し行う。乳幼児の場合、心マッサージ100~120回に対して人工換気を1回の割合で行う。
②ACD-CPR:吸盤の付いた円盤状器具(ACD device)を前胸部に当て、圧迫と牽引を繰り返すことにより効果的に心マッサージを行う方法である。ACD deviceを牽引すると胸腔内が陰圧になり静脈灌流量が増加するため、通常の胸骨圧迫心マッサージより有効な心拍出量が得られると考えられている。ただし、ACD-CPRの心拍再開率および予後の改善効果についての報告はあるが、統一された結論は得られていない。
③開胸心マッサージ:肋間にて開胸し、心膜を切開して、直視下に行う心マッサージ法である。胸骨圧迫心マッサージ法より多い心拍出量、冠血流および他の重要臓器血流が得られる。ただし、熟練した手技を必要とするため、適応は非常に限られる。穿通性胸部外傷による心タンポナーデや胸腔内出血、肺塞栓症、胸郭の解剖学的異常などのために胸骨圧迫心マッサージが無効である症例に対しては有効である。

