循環器用語ハンドブック

左室流入の偽正常化〈pseudonormalization〉

左室の充満は急速流入期、緩徐流入期と心房収縮期の3時相に分けられる。従来から左室の拡張期の評価は、僧帽弁Mモード像の前尖エコーパターンや、拡張期後退速度の低下、E/A比の低下などから行われてきたが、現在では最も定量性があるドプラ法がよく用いられている。ドプラ法で計測された僧帽弁血流速波形のE波は、心房から左室への血液流入は反映するが、それは心房心室間の圧較差によって決まり、また心房圧、心室弛緩性、心房弛緩性などの多因子によって規定されている。また、A波も同様に心房心室間の圧較差によって形成されるが、これは心房収縮による心房圧の上昇と心室のstiffnessによって規定される。すなわち、健常若年者のように心室、心房壁の弛緩性が非常に良い状態では拡張早期に量的に十分な血液流入が得られるため、E波は高く、A波は小さくなる。しかし、加齢や高血圧などで心室壁が硬くなって弛緩性が低下してくると、拡張早期の流入のみでは量的に不十分であり、そのため心房収縮期流入血流量が増大することによって代償するようになってくる。その結果、E波は低くA波は高くなりE/A比は低下する。しかし、肺うっ血を伴うような高度心不全時には、左房圧が上昇しているために拡張早期の心房心室間の圧較差の増大、心室拡張末期圧の増加によって、一見、僧帽弁血流速波形のE波は高くA波が低い正常型を呈するようになる。これを偽正常化(pseudonormalization)という。

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