循環器用語ハンドブック

肺血栓塞栓症

肺血栓塞栓症(PTE)は、肺動脈が血栓塞栓子により閉塞する疾患であり、肺血管床の減少による右室後負荷の増大と換気血流比不均等による低酸素血症を主病態とする。肺血管床の閉塞具合によりショック状態や突然死に至る可能性がある致死性疾患であるが、小さな血栓塞栓子の場合は症状が乏しいこともあり、造影CTなどで偶発的に診断されることもある。

塞栓源の約90%は下肢あるいは骨盤内の静脈で形成された血栓とされており、骨盤内や下肢に血栓が残存している場合、引き続いての血栓遊離によりさらなるPTEが生じる可能性があり、注意が必要である。特異的な症状はないが、胸痛、呼吸困難のほかに、失神を主訴とする場合もある。造影CTによる塞栓子の証明と、心エコー図検査による右心負荷の評価が診断および治療方針決定のための画像検査として重要である。治療は薬物的抗血栓療法を中心とするが、重症例では外科的血栓摘除術が行われる場合もある。

PTE発症後数%の症例は、慢性期に肺高血圧症を合併し、改善していた労作時息切れなどの臨床症状の再増悪を認めることがあり、慢性血栓塞栓性肺高血圧症(chronic thromboembolic pulmonary hypertension;CTEPH)として知られている。CTEPHは厚生労働省の指定難病であり(指定難病88)、バルーン肺動脈形成術(BPA)が有効である症例が多い。CTEPHの診断には肺換気・血流シンチグラフィ、右心カテーテル検査が必須であるが、BPAの施行には施設基準が設けられており、経験豊富な施設への紹介を検討すべきである。元来、心肺疾患のない正常の右室が生じうる平均肺動脈圧は40 mmHgまでといわれている。したがって、急性期にそれ以上の肺動脈圧を呈する場合には、CTEPHの急性増悪やCTEPHそのものを念頭に置くべきである。

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