Ca過負荷〈Ca2+ overload〉

心筋細胞が収縮するためにはカルシウムイオン(Ca2+)が必須であるが、心筋細胞内のCa2+濃度は直接的にはサルコレンマ(細胞膜)上のCa2+ポンプ、Na+/Ca2+交換系、心筋小胞体(sarcoplasmic reticulum;SR)のCa2+ ATPase、ミトコンドリアCa2+輸送系、間接的には細胞内Na+/H+交換系により調節されている。Ca過負荷とは細胞内Ca2+濃度が上昇した状態を指し、心筋細胞障害の直接的原因となる(図)。Ca過負荷の原因となる細胞内へのCa2+流入の機序としては前述の、サルコレンマ上のCa2+ポンプ、Na+/Ca2+交換系、心筋小胞体のCa2+ ATPase、ミトコンドリアCa2+輸送系が関与すると考えられるが、その中でもNa+/Ca2+交換系の関与が最有力視されている。

Ca過負荷を生じる病態としては虚血再灌流障害が代表的であるが、アドリアマイシン急性心不全や肥大型心筋症、拡張型心筋症においても細胞内Ca2+濃度の上昇が報告されている。またフリーラジカルによりCa過負荷は増強され、逆にischemic preconditioningにより軽減される。

心筋細胞内Ca2+調節に関連すると思われるイオン輸送システムと細胞内小器官