僧帽弁閉鎖不全[症]〈mitral insufficiency〉

僧帽弁の接合が不十分であるために、収縮期に左心室より左心房への逆流を生じる状態を僧帽弁閉鎖不全症という。僧帽弁は、僧帽弁器官(弁帆・腱索・乳頭筋・弁輪および左心室の壁運動)により構成され、正常な僧帽弁機能はこれらの協調により営まれているが、閉鎖不全症はこれらの器官の1つ以上の機能異常により生ずる。成因は約3分の1がリウマチ性変化、すなわち僧帽弁器官の肥厚・癒着・短縮であり、約5分の1が自然な変性や感染性心内膜炎による腱索の断裂による。リウマチ性・先天性および逸脱症候群の場合には通常慢性経過をたどるが、虚血やそれに伴う腱索断裂などでは急性の発症となる。

本症の病態は、急性期・慢性期によって異なる。急性期では代償機構が十分でないため、左心房に対して収縮期の容量負荷(著明なv波の出現)、左心室では拡張期の容量負荷(左室拡張末期圧の上昇)となり、心拍出量も低下する。ところが、慢性期になると巨大左房にもかかわらず正常に近い左房圧を呈するようになり、左心室もコンプライアンスの増加とともに拡張末期圧の低下を呈し、遠心性肥大型の形態をとる。これらの病態に示されるように、自覚症状は急性期には突然の起坐呼吸などの急性肺水腫症状を有し、低心拍出から高度のショックを呈する症例も存在する。急性症状を乗り切った症例は慢性化へと移行し、重症化するまで無症状で経過することが多い。

診断は非侵襲的検査法により可能である。心音聴診で心尖部に最強点をもつ全収縮期雑音を聴取すれば本症が疑われ、胸部レントゲン写真での左房拡大(両気管支間の二重円形像)や、心電図での容量負荷型の左室肥大が認められ、心臓超音波法(ドプラ法)によって正確に僧帽弁閉鎖不全症の診断を下すことが可能であるが、確定診断は左室造影にて造影剤が収縮期に左房へ逆流することから行われる(僧帽弁のSellers逆流度分類、図)。

Sellers逆流度分類(僧房弁)

診断確定後の生存率は10年後で約60%といわれているが、急性発症型は重篤であり基礎疾患ならびに重症度により予後は異なる。

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