肺循環〈pulmonary circulation〉

肺循環系は、右心室から肺動脈系、肺胞毛細血管ネットワーク、肺静脈系を経て左房までを示す(図)。右心室から出た肺動脈は第4胸椎の高さで左右の主肺動脈に分枝し、右肺動脈は上行大動脈および上大静脈の後方の右気管支前方を通って右の肺門に、左肺動脈は下大動脈の前で左気管支の上を通って左の肺門に入る。左右肺動脈は肺門から気管支とともに走行し、右肺動脈は右肺の上、中、下葉に入る3大枝に分枝し、左肺動脈は左肺の上・下葉に入る2大枝に分枝する。その後、気管支よりもさらに分枝を広げ、3×108もの数になり肺胞毛細血管ネットワークに達する。肺毛細血管ネットワークは三次元構造を形成し、1つの肺胞には少なくとも6個以上の毛細血管が流入する。流入した静脈血はおよそ0.7秒間で肺胞を通過する間に肺胞気とガス交換し、通過した血液は動脈血化される。肺循環の生体内での主たる作用は、肺毛細血管網におけるガス交換であるが、その他にも肺の栄養と代謝、左心室に対する血液貯蔵機能、静脈系からの異物の瀘過、肺胞からの過剰液体の除去など、多様な機能を有している。毛細血管ネットワークを通過後、動脈血化された血液は肺静脈に集合し、気管支の前をほとんど水平に内側方へ横走後、左・右両肺動脈の下で左心房の上後部に入る。

肺循環

体循環系に比較した肺循環系の特徴は動脈圧が低く、体血圧の1/5~1/10と肺血管抵抗がきわめて低いことであり、これは肺血管構築に由来する。組織学的には、大動脈に比較して肺動脈の壁の厚さは1mmと薄く、血管の内膜は平らな内皮細胞層、中膜はエラスチンを伴った筋層、外膜は線維組織により構成されている。全体としては体循環に比し、強靭でない分、柔らかで弾性に富むという特徴を有している。