冠[状]動脈〈coronary artery〉

心臓は2本の主要な冠状動脈の枝により栄養されている。

左冠動脈は、大動脈基部の左後方に位置する左バルサルバ洞上縁から起始し、右冠動脈は右前方に位置する右バルサルバ洞上縁から起始する。左冠動脈は左心房と肺動脈幹との間を左心耳に被われて下り、前方の左前下行枝および左回旋枝へと分枝する。左前下行枝は右室と左室の前室間溝を下り、心室中隔前部と左室自由壁前壁に分枝していく。最初の分枝は動脈円錐枝であり、ついで心臓の前側面を灌流する対角枝を数本分枝する。さらに、心室中隔の前壁を灌流する中隔枝が垂直に分枝していく。左回旋枝は心基部の房室間溝を走行し、主に左室自由壁の後壁側と心房に分枝を出していく。最初の枝は心房枝で、このうちの1つは左洞房結節動脈と呼ばれる。さらに鈍縁部で鈍縁枝を分枝後、後側壁枝および後下行枝を分枝していく。

右冠動脈は右室基部の房室間溝を走行し、主に右室自由壁と心房、房室結節、心室中隔に分枝を出している。最初の枝は円錐枝であり、続いて洞房結節枝を分枝する。さらに何本かの右室枝を分枝し、鋭縁部で大きな鋭縁枝を分枝し、房室枝および後下行枝を分枝していく。

これら冠動脈の支配領域には優位性が存在し、左冠動脈優位が18%、右冠動脈優位が48%、バランス型が34%と報告されている。冠動脈の分枝は心表面を走行した後、各枝は心室壁内で動脈間の吻合を有さない終末動脈の形態をとっている(図)。

冠動脈

組織的には、一般に血管径10mm以下の動脈は筋性動脈に分類されるが、冠動脈では他の筋性動脈に比較して内弾性板が著明に発達する。また外弾性板が欠如していることを特徴とし、中膜はほとんど平滑筋細胞により構成され、内弾性板から分枝した弾性板が侵入し弾性型動脈様の像を示す。