皮膚は、外因性・内因性物質の吸収・排出を阻止するバリアとして働き、薬物の投与部位として全身的効果は期待できないと考えられていましたが、1970年頃から、薬物を作用部位へ選択的に、望ましい治療濃度パターンになるように送達する、いわゆる薬物送達システム(Drug Delivery System:DDS)の研究が盛んになりました。我が国における全身用経皮吸収型製剤の開発は、1984年に硝酸イソソルビド含有の「フランドル®テープ」が虚血性心疾患治療剤として発売され使用が開始されたことに始まります。
経皮吸収型製剤は、経口剤とは違い、
① 薬物成分は皮膚からゆっくり吸収されて持続的に効果を発揮する
② 薬物のバイオアベイラビリティ(生物学的利用率)が高められる
③ 安定的な有効血中濃度領域を長時間維持できる
④ 効果の変動が起きにくく副作用の軽減が期待できる
⑤ 注射剤のような専門的手技を必要としないので使用が簡便
⑥ 目で見て服薬を確認できる
などといった様々な利点があります。
一方、経皮吸収型製剤による副作用の多くは皮膚症状ですが、そのほとんどは普段からのスキンケアと、症状が発現したときの適切な処置により軽減・消失させることができる軽微なものです。本コンテンツにより、経皮吸収型製剤の特徴、使用におけるポイント、スキンケアへの理解を深めていただき、経皮吸収型製剤が適切に使用され、患者さんが最大限のベネフィットを受けられるようになれば幸いです。
杏林大学医学部 皮膚科学教室
名誉教授 塩原 哲夫
現在では、心臓病用薬・喘息用薬などを中心に、高血圧用、ホルモン補充用、泌尿生殖器用、中枢神経用、癌性疼痛用、禁煙補助用、抗アレルギー用の9領域(2018年)で使用されています。
「禁忌を含む使用上の注意」等につきましては、製品情報ページより添付文書等をご参照ください。