HEART’s Up To Date 循環器医が知っておくべき最新のエビデンス
「心臓」Vol.55 No.6より
野村 征太郎(東京大学医学部附属病院 循環器内科)​

心臓 Vol.55 No.6
T cells specific for α-myosin drive immunotherapy-related myocarditis
Nature 2022 Nov;611(7937):818-826
doi:10.1038/s41586-022-05432-3. Epub 2022 Nov 16

 免疫チェックポイント阻害薬によるがん治療の有効性はよく知られていますが、治療の際に生じる心筋炎は大変重要な合併症です。しかしながら、その分子機序の詳細は明らかではありません。
 筆者らは以前、Pdcdl遺伝子を両アリルで欠損させてCtla4遺伝子を片アリルで欠損させることで、免疫チェックポイント阻害に伴う心筋炎をマウスで再現することを報告していました(Cancer Discov 2021;11(3):614-625)。この研究で筆者らは、このマウスの心臓をシングルセルRNAシークエンスおよびT細胞受容体シークエンスで解析することで、クローン性増殖したCD8陽性のエフェクターT細胞がdominantな細胞集団であることを明らかにしました。このマウスに抗CD8抗体を投与すると心筋炎が抑制されて生存率が改善しました。心筋炎を起こしたマウスから免疫細胞を移植すると、レシピエントマウスで致死性の心筋炎が誘発され、その発症にはCD8陽性T細胞が必要でした。
 T細胞は胸腺における発生の過程でT細胞受容体遺伝子の再構成を起こすことによって、1億種類にも及ぶ抗原特異性を獲得します。そこで筆者らは心筋炎マウスのT細胞が認識する抗原を特定するために、このマウスのT細胞におけるT細胞受容体遺伝子の配列を読み取り、その部位のDNA配列を培養T細胞に導入し、様々なペプチドを作用させてT細胞が活性化するかを評価しました。その結果、このT細胞は心臓特異的αミオシンを抗原として認識していることが判明しました。
 さらに筆者らはこの所見がヒトでも同様にみられるかを確認しました。具体的には、免疫チェックポイント阻害薬によって心筋炎を発症した患者の末梢血からT細胞を採取してαミオシンペプチドを添加すると、この細胞がこれを抗原として認識して増殖することを示しました。さらにαミオシンの添加によって増殖したT細胞は、罹患している心臓および骨格筋に存在するT細胞と同じクローンであることを証明し、実際にヒトにおいても免疫チェックポイント阻害薬関連心筋炎においてαミクロンが臨床的に重要な自己抗原である可能性を示しました。
 この研究のように、モデル動物とヒト臨床検体を用いてシングルセルレベルの解析をすることで循環器疾患の未知の病態が明らかとなり、治療法開発への道が拓かれていきます。

2024年10月作成

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