無症候性の心房細動は脳梗塞や心不全発症の危険因子であることから、早期スクリーニングを行うことに論を俟たないが、有病率は1%前後であることから、適切なハイリスク集団に絞ってスクリーニングを実施することが必要になる。そこで本研究では、心房細動の5年以内の新規発症リスクスコアであるCHARGE(Cohorts for Heart and Aging Research in Genomic Epidemiology)-AFリスクスコアを用いて、5%以上のリスクをもつ閉経後の女性を対象に、単誘導の心電図パッチを用いて連続7日間のスクリーニングによって、どれくらいの心房細動患者がスクリーニングされうるかを検証したものである。 CHARGE-AFリスクスコアは年齢・人種・身長・体重・血圧・降圧剤使用の有無・現在の喫煙の有無・心筋梗塞や心不全の既往・糖尿病の合併を用いてリスク評価を行うものであり、ベースラインにおける心房細動患者は除外されている。1067名の被験者に対して、試験登録からベースライン・6カ月および12カ月後に評価を実施したところ、ベースラインの7日間モニタリングにおいてすでに2.5%で心房細動が検出され、さらに6カ月までに3.7%、12カ月までに累積で4.9%まで増加した。CHARGE-AFスコアが高い(5年間の予測新規発症率10%以上)群の被験者での心房細動検出割合はさらに高く、ベースラインで4.2%、6カ月で5.9%、12カ月で7.2%であった。 心房細動検出の手法は最近ではスマートウォッチを用いたものの研究が盛んに行われているが、臨床現場において適切にリスク評価を行い、スクリーニングを頻回にかけることにより、7日間×3回のパッチ型心電図スクリーニングによって5%弱まで検出率を高めることが明らかとなった。今後、無症候性心房細動のスクリーニングの費用対効果を検証する意味で、非常に意義深い論文である。
こちらはスマートウォッチを用いた心房細動検出に関する機器間の比較の論文。12誘導心電図で評価を行った201人の患者(女性31%、年齢中央値66.7歳)に対して、CEマークおよびFDA認証を取得している5種類の在宅心電図波形を採取することができるスマートデバイス(Apple Watch 6・Samsung Galaxy Watch 3・Withings Scanwatch・Fitbit Sense・AliveCor KardiaMobile)を用いて、前向きに単一誘導心電図を取得して診断精度を分析した。対象集団がバーゼル大学病院に心臓病で通院中の患者群であったため、心房細動は62例(31%)の患者に認められた。肝心のAF検出の感度と特異度はApple Watch 6とSamsung Galaxy Watch 3の感度が85%(95% CI:72-94%)で最高であり、Withings ScanWatchの58%が最低であった。特異度は79%(Fitbit Sense)から69%(AliveCor KardiaMobile)の範囲であった。一見、機器間に格差があるように思えるものの、診断精度が高いとラベル付けされた波形だけを見ると、すべての機器の感度・特異度ともに95%前後であり、おおむね差は認められなかった。一方、診断精度が低いとラベル付けされた波形は、全体の波形のうちの17-26%に至っており、その波形を医師がマニュアルで確認したところ、おおむね心房細動の判定の有無に寄与できる波形が取得されていることが明らかとなった。 現在市販されているこれらのスマートウォッチにおける標榜性能は、すべて診断精度が高くないと判断した波形を除外したものである。実際には1/4の波形はAIでの判定は困難である一方、医師がその波形を確認すると多くは診断に耐えうる程度(でもAIには判定できない程度)の精度の心電図が取得されていることがわかった。これらの結果から、スマートウォッチを心房細動のスクリーニングに用いる場合には、自動化されたプロセスだけでは追いかけられない波形があることをふまえつつ、それを医師の目という”質”でカバーするのか、波形取得回数の増加という”量”でカバーすべきかについて考えなければならない。
2024年10月作成
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