MAPキナーゼ〈mitogen-activated protein kinase;MAPK〉

マイトジェン活性化蛋白質リン酸化酵素(mitogen-activated protein kinase)の略称。細胞内シグナル伝達経路の中枢を担うセリン/スレオニンキナーゼの1つ。触媒サブユニットだけからなる単量体の酵素で、活性に補因子を必要としない。酵母から高等植物および脊椎動物に至る真核生物に、普遍的に存在する。哺乳類には44kDaと42kDaの2種類(extracellular signal-regulated kinase;ERK1, ERK2)が存在している。キナーゼサブドメインⅦとⅧとの間に位置するThr-Glu-Tyr(TEY)配列のスレオニン残基とチロシン残基が、ともにリン酸化され活性化することが特徴である。この両者の上流はMAPキナーゼキナーゼ(MKK1/2)と呼ばれる酵素によって担われている。

MAPキナーゼは当初、上皮増殖因子(epidermal growth factor;EGF)、PDGF(platelet-derived growth factor、血小板由来増殖因子)、発癌プロモーターであるホルボールエステルなどの増殖因子刺激やインスリン刺激ですばやく活性化するキナーゼとして見出されたが、神経成長因子(nerve growth factor;NGF)などの分化刺激のシグナル伝達、免疫細胞の活性化や卵熟成過程の多彩な系で活性化することが明らかにされた。チロシンキナーゼを有する増殖因子受容体のシグナル伝達において、癌遺伝子産物Rasおよび癌遺伝子産物Raf-1の下流でMAPキナーゼキナーゼ(MKK)とMAPキナーゼが連鎖的に活性化し、細胞増殖の開始に重要な役割を果たす。現在ではMAPキナーゼは細胞増殖、細胞周期および細胞分化、発生のさまざまなシグナル伝達系で中心的役割を担うと考えられている。活性化に伴い細胞質に存在していたMAPキナーゼが核に移行することが明らかにされており、外界からのシグナルを核に伝達する働きをもつと考えられている。In vitroでは微小管関連蛋白質MAP2、ミエリン塩基性蛋白質MBPをよい基質とする。In vivoの基質として転写因子であるMycやElk-1セリン/スレオニンキナーゼであるp90rsk、微小管関連蛋白質であるp220が知られている。

循環器領域では心筋細胞や血管平滑筋の肥大に関わっていると考えられている。つまりG蛋白質を介する分子種(アンジオテンシンⅡ、エンドセリンⅠ、フェニレフニンなど)が受容体に結合し、また血管のずり応力などがホスフォリパーゼCを活性化し、ジアシリグリセロールとCaが生成される。そのジアシルグリセロールがプロテインキナーゼCを活性化し、さらにRaf-1が活性化され、MAPキナーゼカスケードを介して、心筋細胞や血管平滑筋の肥大に関わる蛋白質が生成されると考えられている。

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