Rossの傷害反応説〈response to injury hypothesis for atherosclerosis〉

Russell Rossらが1970年代に打ち立てた動脈硬化病変が血管内皮細胞の障害に対する反応の結果であるという仮説であるが、その後幾度か改訂され、現在の動脈硬化の病態の中心である炎症説の基盤になっている。高コレステロール血症、高血圧、糖尿病、ホモシステイン血症、感染症などのさまざまな刺激により、内皮機能障害が生じると、血管透過性が亢進し、リポ蛋白質が内皮下に侵入する。またMCP(monocyte chemotactic protein)-1などにより単球が血管内皮に遊走され、ICAM(intercellular adhesion molecule)-1やVCAM(vascular cell adhesion molecule)-1などの接着因子に接着、内皮細胞下に侵入し、単球はマクロファージに分化して酸化LDLなどを貪食して泡沫化する。また、内皮の抗血栓性が低下することにより、血小板の凝集、接着が起こるとともに、TNF(tumor necrosis factor)-αなどの刺激によるTリンパ球の活性化やPDGF(platelet-derived growth factor)などの増殖因子により、平滑筋細胞の中膜から内膜への遊走、増殖が誘導される。このような過程を経て、脂肪線条(fatty streak)の形成に続き、動脈硬化病変が進展していくという仮説は動脈硬化を細胞生物学的な見地から捉えた最初の報告であった。当初は血管内皮細胞の剥離に続いて一連の反応が起こるとされていたが、内皮細胞の剥離がなくてもその後の反応が起きることから、血管内皮細胞の機能的な障害が動脈硬化初期病変形成に必要であるとした。Rossらの傷害反応説は、動脈硬化病変進展機構で最も受け入れられている説であるが、Tabasらは、コレステロールやアポリポ蛋白質Bリッチなリポ蛋白質が血管内に貯留しないと動脈硬化は生じないとする"response to retention"説を展開している。

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