PAI-1は、血管内皮細胞で402アミノ酸からなるポリペプチドとして産生され、細胞内でプロセッシングを受け379アミノ酸の1本鎖糖蛋白として血中に分泌される。産生を促すシグナルはさまざまで、おおよそ炎症に関連する物質や、血管壁に変化を起こさせるようなサイトカインにより産生は亢進する。PAI-1はセリンプロテアーゼインヒビターであり、血中に産生されたt-PAの約90%を捕捉し、複合体(t-PA・PAI-1複合体)を形成して失活させる。もう1つt-PAによる線溶を抑制する物質に、α2-プラスミンインヒビター(α2-PI)があり、こちらは血中に遊出したプラスミンを捉えて複合体をつくり、網内系に処理される(図)。プラスミノーゲンアクチベータ、プラスミンはいずれもセリンプロテアーゼであり、特にプラスミンはトリプシン様プロテアーゼとして、本来のフィブリン分解能のほかに、血管内皮傷害、フィブリノゲン分解、第Ⅴ、Ⅷ因子分解、ACTH(副腎皮質刺激ホルモン)分解なども起こす両刃の剣といえる。そこで、t-PAの項と本項で述べた機構により、正常血管内では線溶が加速されにくく、血栓が形成した場所では集積し、数分のタイムラグをおいて一気に線溶を加速する巧妙なメカニズムが整っている。